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水の線路「命は」

今日、母の病室に行くと空気人形のサントラが流れていた。
適度な広さの四人部屋に久しぶりに日光が降り注いでいて、おばあさんたちが静かに寝ていて
水の線路「命は」が、泣けてくるくらいにその光景に合っていた。
今ほど、この詩が自分に染みこむことはないように思えました。

孤独感、空虚感が悪いことだけではない世界、そこに他者がそっと寄り添う世界。
きっとそこに本当のやさしさが存在する、そんなふうに思えました。



生命は 
       吉野弘

生命は
自分自身で完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする


生命はすべて
そのなかに欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ


世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思えることさも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?


花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした他者が
光りをまとって飛んできている


私も あるとき
誰かのための虻だったろう


あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない







World's End Girlfriend (Bae Doo-na) 水の線路「命は」







by bleugreen | 2018-09-12 01:05 | 日々のこと